週末公演とはいえ、開場16:30/開演17:00という早めの時間設定。通常のロックコンサートに比べると明らかに早いこのタイムテーブルは、やはり往年のファン層を意識したものなのだろうか、などと考えつつ会場へ向かいました。
物販ではMoogとC-3の鍵盤部がプリントされたTシャツ、ポスターパンフ、携帯ストラップを購入。会場内には若い観客の姿も見られましたが、やはり平均年齢は高めで、40代後半〜50代と思しき層が最も多かった印象です。
座席は9列目のどセンター。視界、音響ともに申し分ないポジションです。コの字型に組まれたキーボードはやや内向きにセッティングされており、Keith Emersonの手元がしっかり見える絶好の角度。ブースの位置はELP時代と同様、センターやや下手側です。
正面を開いたコの字型のセットアップで、上手側にはお馴染みGOFF刻印入りのHammond C-3。スタンド部は切り離され、特注と思われる2本脚スタンドで支えられています。スタンド横のステーにはエクスプレッションペダルを装着。その上にはKORG OASYS(88鍵)、下手側にはKORG TRITON Extreme(こちらも88鍵)。そしてコの字の奥には、先日この世を去ったBob Moog博士が生み出した伝説的シンセサイザー、Moog Modularが鎮座しています。Keith Emerson所有のオリジナルなのか、Moog IIIのレンタルなのかは判別できませんでしたが、その存在感は圧倒的。今回は“格闘専用”のL-100の出番はありませんでした。
今回特に印象的だったのは、OASYSの活躍ぶり。88鍵を活かしたスプリット設定、音色の巧みなアサイン、さらにパッド部へのサンプル割り当てなど、最新シンセならではの機能を効果的に使いこなしていました。ピアノソロ用のスタインウェイ・グランドピアノはステージ上手に配置されており、おそらく会場常設のものと思われます。
Keith Emerson(key)を支えるバンドメンバーは、Dave Kilminster(g, vo)、Phil Williams(b)、Pete Riley(ds)の4人編成。KilminsterはFenderのテレキャスターにAC30を2台使用し、過度にメタル寄りにならない程度のしっかりとした歪み。エレアコはTakamine。Pete Rileyはレフティのドラムセットで、タイトかつ安定感のあるプレイが印象的です。後半にはドラムソロもありましたが、冗長さを感じさせない好演でした。Phil Williamsは派手さこそありませんが、随所に小技を効かせた堅実なベースでリズム隊を支えています。
Kilminsterはセンターでボーカルとギターを担当するため目立つ存在ですが、歌・ギターともに好印象。Greg Lakeのような低音域よりも、ハイトーンに持ち味があるタイプのようです。ギタープレイはHR寄りでテクニカル、Rich KotzenやIt Bites時代のFrancis Dunneryを思い出させる瞬間もありました。派手なスウィープ、タッピング、速弾きなど見せ場も豊富。時折Keith Emersonのブース前に出て演奏するため「ちょっと邪魔では?」と思う場面もありましたが、若いメンバー(とはいえ30代に見えました)がいることで、バンド全体の活性剤になっているのは確かでしょう。
以下、セットリストを中心に雑感です。
- 「Welcome Back」(『Karn Evil 9 1st Impression Part 2』)
- 定刻に近いタイミングで暗転。メンバーが登場し、Moogのステップシーケンサーを走らせておどけるKeith Emerson。そこからお馴染みのS&Hシーケンスが流れ、「Welcome Back」へ。会場は一気に沸騰。序盤から感極まるものがありました。KilminsterのボーカルはGreg Lakeを意識した雰囲気。再結成ELPのように冒頭部分のみかと思いきや、第一印象ラストまでしっかり演奏されました。鍵盤のコンディションも良好で、何よりバンドとの演奏を心から楽しんでいる様子が伝わってきます。
- 「Toccata Con Fuoco」
- 『Works』収録の「ピアノ協奏曲第1番」第3楽章のピアノリフをバンドアレンジで披露。オーケストラ原曲をロックとして再構築したアレンジで、この曲が聴けたのは嬉しい驚きでした。
- 「Living Sin」
- 「Bitches Crystal」
- 『Trilogy』『Tarkus』からのELPナンバーが続きます。ギターが加わることで、よりハードな印象に。Kilminsterがキーボードとユニゾンする場面も多く見られました。
- この辺りでMC。日本語披露のためカンペを取り出し、さらに老眼鏡(グラサン?)を取り出すお茶目な一幕も。内容は「避妊するの忘れちゃった」など、典型的なオヤジ下ネタでしたが、会場は大ウケ。曲間ごとに、曲名を書いたボードを掲げたラウンドガール風のお姉さんが袖から袖へ移動する演出もあり、少し邪魔に感じつつも、どこか和やかな空気でした。
- 「Hoedown」
- 冒頭のSEはOASYSで再現。血液が逆流するような高揚感。テーマ冒頭で若干のミスはありましたが、オルガンで弾き切ってくれたのは嬉しい限り。途中でKeith Emersonがブルースハープも披露しましたが、こちらはご愛嬌。
- 「Country Pie」
- 「Static」
- 新曲と思われるプログレ・ハード調のナンバー。Dream Theater「6:00」を思わせるリフが印象的でした。
- 「Intermezzo From The Karelia Suite」
- TRITON Extremeのストリングスが良い雰囲気を演出。
- 「Piano Solo(New Song, A Cajun Ally, Creole Dance)」
- スタインウェイへ移動し、まずはニューオリンズの被災者に捧げる新曲。その後のソロピアノ2曲も含め、改めてKeith Emersonのピアノの素晴らしさを実感させられました。
- 「Touch And Go」
- Emerson, Lake & Powell時代の楽曲。Cozy Powellへの思いもあったのかもしれません。これは嬉しい選曲でした。シンセブラスはOASYS。
- 「Lucky Man」
- ボーカルはやや苦しそうでしたが、ラストのMoogソロは圧巻。OASYSやTRITONでは決して出せない、次元の違う音圧が会場を包み込みます。低音域では地鳴りのような振動。PAにも感謝したくなる瞬間でした。
- 「America」/「Rondo」
- 「America」をオルガンで弾き切り、「Rondo」ではお約束の逆弾きパフォーマンス。OASYSのディスプレイを倒す演出に会場は大歓声。
- 「Tarkus」
- 冒頭ボイスはTRITON。テーマはOASYSのシンセブラスで演奏され、やや惜しい部分もありましたが、インタープレイは壮絶。オルガングリス、リボンコントローラーを手にステージから飛び降りる姿は、とても60歳とは思えない迫力。「Battlefield」後に「Epitaph」が挿入される展開も印象的でした。ラストはMoog Modularのステップシーケンサーで「教典/第三印象」ラストが流れ、スタンディングオベーションの中、退場。
- アンコール1「Black Dog」
- Led Zeppelinのカバー。Kilminsterをフィーチャーした選曲で、意外性はありつつも大盛り上がり。
- 「Fanfare For The Common Man」
- 本当の意味でのアンコール。会場は総立ち。最後に“5人目のメンバー”としてMoog Modularを紹介するKeith Emersonの姿に胸を打たれました。
- アンコール2「Honky Tonk Train Blues」
- OASYSのサンプラーで電車SEを流しつつ、陽気なブギウギで大団円。ELPナンバーで締めない選択も、結果的に非常に良かったと思います。
往年の名曲と現在進行形の表現力が同居した、非常に満足度の高い来日公演でした。
Setlist 17:05〜19:30(2h 25m)
- Welcome Back(Karn Evil 9 1st Impression pt2)
- Toccata Con Fuoco
- Living Sin
- Bitches Crystal
- Hoedown
- Country Pie
- Static
- Intermezzo From The Karelia Suite
- Piano Solo(New Song, A Cajun Ally, Creole Dance)
- Touch And Go
- Lucky Man
- America/Rondo
- Tarkus
- encore1:Black Dog
- encore1:Fanfare For The Common Man
- encore2:Honky Tonk Train Blues
