今週のお題「SFといえば」
SF。幼少時に好きだったアニメ作品(やはり松本零士作品〜ガンダムか)や名作小説、流行った映画などが自分のSF体験でしょうか。そんな身近でもあり、少しハードルの高さも感じるSFですが、不思議と自分が聴く音楽の周りには常にSFの影がありました。
幼少時にドーナツ盤を擦り切れるまで聴いていた映画『未知との遭遇』のテーマ曲。オリジナルはジョン・ウイリアムスですが、このシンセサイザーとバンドとオーケストラによるバージョンが大好きでした。
私にとって「シンセサイザー+SFっぽい雰囲気=未来的、カッコいい!」の原体験は間違いなくこの曲で(「コンピューターおばあちゃん」よりも!)、この後に続く私の音楽体験に大きくつながっていそう?
10代の頃よく聴いていたTM NETWORKの2ndアルバムのタイトルは『CHILDHOOD'S END』。そう、アーサー・C・クラーク『幼年期の終り』からの引用。アルバム収録曲の「永遠のパスポート」もJ・G・バラードからインスパイアされたもの(作品は知りません)。
恐らくリーダーの小室哲哉氏がSFファンなのだと思うのですが、そんな小室氏が音楽的にも影響を受け、私自分もその流れからどっぷりハマるようになった「プログレッシブ・ロック」はSFやファンタジーと深い間柄にある音楽でした。
私自信がシンセサイザーを演奏するようになるのはこの頃から。楽器でありながらさながらSF作品に登場する宇宙船のコンソールのようでもあるシンセサイザーは、ロックの象徴であるギターなどとはまた違った魅力を持った楽器でした。
そんなシンセサイザーをロックの世界に持ち込んだイギリスのバンド、エマーソン・レイク・アンド・パーマー(EL&P)の代表作『恐怖の頭脳改革』のアルバムジャケットは「エイリアン」のデザインで知られるH・R・ギーガーによるもの。
EL&Pのキーボード(シンセサイザー)奏者、キース・エマーソンは日本のアニメ映画『幻魔大戦』の音楽を手掛けたこともありました(主題歌「光の天使 Children Of The Light」も名曲)。
余談ながらELPと略称の綴りが似ているELO(Electric Light Orchestra)も初期のTMがよくオマージュしていましたが、70年代後半からのサウンドはSF的な(スペイシーな?)雰囲気をまとったグループでした。
私が最も好きなプログレバンドであるYESは、SFというよりはファンタジー要素も強いですが(「SF」にはサイエンス・フィクションだけでなくサイエンス・ファンタジーの意味もあるのだとか?)、70年代のYES黄金期を支えたキーボーディスト、リック・ウェイクマンのソロアルバムには、ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』をモチーフにした作品『地底探検』があります。
また、ウェイクマン脱退後のYESへの加入も噂されたのが、先ごろ亡くなったギリシャの作曲家ヴァンゲリス。リドリー・スコットの映画『ブレードランナー』(原作は フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』)の音楽はあまりに有名。
80年代のYESを支えた立役者といえば天才トレヴァー・ラビン(大好き!)ですが、YESでロックビジネスの世界に疲れ果てた後、映画音楽の巨匠ハンス・ジマーの導きにより映画音楽の作曲家となり映画『アルマゲドン』の音楽なを担当しています。『アルマゲドン』はSF映画でもギリOKですよね?
ラビンの師匠であるハンス・ジマー、最近ではフランク・ハーバートの小説『デューン砂の惑星』を原作とした映画『DUNE/デューン 砂の惑星』でアカデミー作曲賞を受賞しています。この映画の予告編ではPink Floydの「Eclipse」が使用され、これが実に感動的(映画は見てません)。SFを共通項にしてプログレから映画に行き、またプログレに戻ってきました。
『デューン/砂の惑星』は1984年にもデヴィッド・リンチが映画化しているのですが、この映画を知ったのは音楽をブライアン・イーノが出掛けていることと、ロックバンドTOTOによるテーマ曲がバンド仲間のプログレ界隈(嫌な界隈だよ)で人気だったこと。
さらにこの映画には若きスティング(元THE POLICE)が出演していて、ロックファン的には見所の多い作品でもあります(と言いつつ学生の頃に見たキリで覚えてない……)。このスティングがどことなくデヴィド・ボウイを彷彿とさせるルックスなのですが、デヴィッド・ボウイといえば『地球に落ちて来た男』であり、『ジギースターダスト』で「スターマン」な訳でもうバリバリのSFロッカーな訳ですね(?)。
最近ではSF小説『火星の人』を原作にした映画『オデッセイ』(The Martian)でもボウイの音楽が印象的に使われていました。ここでもリドリー・スコット。
ちなみにボウイはデヴィッド・リンチの映画『ツインピークス』(SFではないが)に出演しているので、砂の惑星から突然の飛躍はギリ許して。
このようにロック音楽とSFの親密さについて思い出すとキリがない訳ですが(まだまだいくらでも出てきそう)、最後に私自身が音楽経由で触れたSF作品についてひとつ。
かれこれ30年近く聴き続けているKENSOという日本のプログレッシブ・ロックバンド。このバンドの曲に「インスマウスの影」というものがあります。もちろんH・P・ラヴクラフトの作品(こちらは「インスマスの影」)をオマージュしたタイトルなのですが(その他に「ミスカトニック」という曲なども)、当時のプログレ少年はラヴクラフトを知ることもなく、不思議なタイトルに惹かれてクトゥルフ神話を読むに至ったのでした……。結局ラヴクラフトもそれっきりなのですが……。
最後と言いつつもうひとつだけ。
SF作品や作家と直接関係ないものの、個人的に「とてもSFっぽい」と感じているフェイバリットソング。カナダのちょいプログレテイストなロックバンドKlaatu(バンド名はSF作品『地球の静止する日』からの引用らしいので、バリバリSF関係あったわ)の代表曲「Calling Occupants Of Interplanetary Craft(邦題「星空への旅立ち」)」。
テレパシーで宇宙を旅する宇宙船に向けて地球の危機を呼びかける歌詞を歌ったこの曲。小説『三体』を読んでいた際、無性にこの曲が聴きたくなりBGMにKlaatuを流していましたっけ。
この曲はなんとあのカーペンターズもカバーしています。カーペンターズなのに7分越え! この曲を盾に「カーペンターズはプログレ!」とうそぶくプログレファンを見かけたら広い心で生暖かく見守ってあげましょう。ということで、ガンダムやマクロス、BTTF、SWだけでなく、昔から私の周りにはロックを媒介してSFが溢れていたのでした。
他の音楽ジャンル(メタルやジャズ)でも広がりそうな気はしますが、ひとまずこの辺で。