坂本龍一氏との共演でも知られるクリスですが、本作にはその「教授」もゲスト参加しています。アルバム全体を通してプログラミングやエレクトロニカ寄りのサウンドが大幅に導入されており、アンビエントな雰囲気の楽曲も多く含まれています。ジャズ・アルバムという先入観で聴くと驚くかもしれませんが、まるで教授のソロ作品を聴いているような錯覚に陥る瞬間も。特にオープニングの「September (For Tanja)」は、教授のピアノということもあり、その色合いが非常に濃く出ています。一部、やや狙いすぎな感もありますが、こうしたアプローチも新鮮で面白いですね。
また本作には、今年1月に惜しまれながらこの世を去った故マイケル・ブレッカーが、2曲にテナーサックスとEWIで参加しています。闘病の合間を縫って録音されたとは到底思えないほどの力強いプレイは圧巻。特に「If I Run」におけるEWIの演奏は、胸に迫るものがあり感動的です。
クリスの演奏はアコースティック・ベースが中心ですが、エンドースしているヤマハのサイレントベース(エレクトリック・アップライト・ベース)を多用しているのも今作の特徴です。単なるアコースティックの代用にとどまらず、「Last Call」などで聴けるディストーションを効かせたソロ(前半がマイク・スターン、後半がクリス)もサイレントベースによるもの。MIDIピックアップも搭載されているようで、こうした多彩なサウンドをブルーノート東京のステージでも披露してくれるのか……。マイクのバンドとしての来日なのでそこまでは難しいかもしれませんが、期待が膨らみます。
