Antonio Sanchezは、Pat Metheny Group『Speaking Of Now』においてこれまで不動と思われたカルテットの新メンバーとして名を連ねた際、その起用に驚いた記憶があります。当時、Pat Metheny自身が各インタビューでAntonioへの強い信頼と評価を語っており、「Antonioありきの新生PMG」という発言が印象に残っています。本作は、そんなAntonio Sanchezによる初のリーダーアルバムとして発表されました。
基本編成は、David Sanchez(ts)、Chris Potter(ts)、Scott Colley(b)によるダブルテナー・カルテットです。ボーナストラックを含む2曲ではChick Coreaが楽曲提供およびゲスト参加しており、さらにPat Methenyも1曲の作曲と2曲でのゲスト参加を果たしています。それ以外の楽曲は、すべてAntonio Sanchez自身による作曲です。
オープニングはChick Coreaが参加するトリオ編成の楽曲で、前日に紹介した『Dr.JOE』に通じる雰囲気があり、Chickらしい明快で印象的なテーマが際立っています。このセッションがきっかけとなり、Chick Coreaが自身のレコーディングにAntonioを起用することになったという話もあり、一流ミュージシャンの創作意欲を刺激する存在であることがうかがえます。
Pat Methenyが加わる3曲目は、静かな導入部から徐々に高揚していく美しい楽曲です。Patとの共演は、アルバム終盤に収録されたドラムとギターのデュオによる「Solar」でも聴くことができ、両者の呼吸の合った演奏が強く印象に残ります。
4曲目は、Antonioの特徴でもあるフット・クラーベから始まるナンバーです。4/5拍子の中で、4のクラーベと8分のハイハットを同時に刻むドラムプレイは、冷静さを保ちながらも非常に高度な技術を感じさせます。派手に叩き立てるタイプの演奏ではなく、落ち着いた音楽的流れの中で的確に決まるリズムとフレーズが心地よく響きます。
コード楽器を含まない編成でありながら、ダブルテナーという構成も相まって、アンサンブル全体に立体感を与えている点も本作の魅力です。ドラムのみならず、作曲や理論面にも深い理解を持つAntonio Sanchezならではの音楽性が、作品全体を通して感じられます。
なお、ブックレットには、特徴的なヘアスタイルにキャップとヘッドホンを着け、レコーディングに臨むPat Methenyの姿も収められており、ファンにとっては興味深い一幕と言えるでしょう。
