Dream Theaterの40周年アニバーサリーツアー、日本武道館公演を観てきました。彼らのライブを観るのは2017年の日本武道館以来、実に9年ぶりです。

2023年にマイク・ポートノイが復帰、昨年最新アルバム『Parasomnia』をリリースしたDream Theater。元鞘体制で行われている40周年ツアーの一環としての来日です。アルバムは聴いたものの、ヘヴィ&ダーク寄りの路線は正直あまり好みではなく、来日公演も当初はスルーするつもりでした。ところが昨年末にリリースされたライブ盤『Quarantieme: Live A Paris』を聴き(久しぶりに彼らの円盤を購入)、Blu-rayも観てみたらこれが思いの外に素晴らしい! 結局、発売から時間が経っていましたが武道館公演のチケットを購入しました。

当然ながら残っていたのは下手サイド2階席後方のなかなかに厳しい席。ステージ演出はかなり見切れ、映像は一切見えず、ジョーダン・ルーデスも半分しか見えないというポジション。それでも、9年ぶりに体感するDream Theaterのステージはやはり素晴らしかった。

何よりも強く感じたのは、マイク・ポートノイのドラムの「しっくりくる感」。マイク・マンジーニ時代は「A Dramatic Tour of Events Japan」を含め2回観ていて、その技巧と安定感には毎回驚かされていましたが、それでもなおこのバンドはポートノイが叩いている時のほうが「らしい」と感じてしまうのも事実。定番曲から最新作まで、20分の休憩を挟んで本編約2時間35分、トータル3時間弱というボリュームのコンサートでした。
事前にツアーのセットリスト等の情報はほぼ入れず、『Quarantieme: Live A Paris』に近い内容を期待していましたが、結果として一番聴きたかった(2004年の武道館以来の)「Vacant 〜 Stream Of Consciousness」は演奏されませんでした。
他にも期待していた「Under A Glass Moon」や「Hollow Years」、マンジーニ時代曲では好きだった「Barstool Warrior」もないまま本編ラストが「Octavarium」と分かった瞬間、「ああ、これで終わりか……」と少し寂しい気持ちになったのも正直なところ。それでもライブ自体のクオリティは非常に高く、平均年齢が60歳を超え(ジョーダン・ルーデスに至っては今年70歳)るバンドとは思えないキレ味のある演奏でした。
セットリスト雑感(前半)
オープニングは彼らを代表するナンバー「Metropolis Pt. 1」。2017年の『Images & Words』再現ライブでは半音下げていたキーを元に戻し、ボーカルの負担が大きい部分はメロディを変更しながら、徐々にエンジンを温めていくジェイムズ・ラブリエ。2時間半の長丁場、最初から全力ではなく後半に向けて上げていくあたりは長年のツアーで培ったルーティーンでしょうか。それを差し引いても、この日のラブリエはかなり好調に感じました。
続いて『Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory』から一気に4曲。『Quarantieme: Live A Paris』ではやっていなかった流れで、ここは純粋にテンションが上がります。
「The Enemy Inside」はマンジーニ時代の曲ですが、ポートノイが叩いても違和感がない。13年バンドを離れていたとは思えないフィット感で、これは1990年代からDream Theater=ポートノイのドラムを聴いてきた自分の感覚も大きいのでしょう。
「Peruvian Skies」は冒頭でジョン・ペトルーシが「On the Backs of Angels」のアルペジオを弾くので一瞬そちらかと思わせつつ、そのままピンク・フロイド風のセッションへ。間奏では「Wish You Were Here」風のコードストロークの上でルーデスがギター音色でシンセソロを弾き、ラストはお約束の「Wherever I May Roam」(Metallica)を引用。こういう遊び心もこのバンドの醍醐味。
22年前に武道館ライブの1曲目として演奏された「As I Am」はすっかり彼らのライブ定番曲。『Train of Thought』という作品は、今振り返っても名盤だと思います。『Quarantieme: Live A Paris』でもやってたけど2コーラス目のサビ前でポートノイが「ポポポポーン!」と叫ぶのは一体!?

20分の休憩では男性トイレに大行列ができていましたが、さすがに20分もあるので余裕で回転していたと思います。
後半戦:『Parasomnia』「Octavarium」
後半は「In the Arms of Morpheus」から始まる最新作『Parasomnia』タイム。正直言うと新作からは「Night Terror」と「Midnight Messiah」程度で、あとは懐かしい曲を期待していたのですが、冒頭のインスト曲「In the Arms of Morpheus」からアルバムラストを飾る20分の大作「The Shadow Man Incident」まで、『Parasomnia』の核をしっかり再現する後半戦のセットリストでした。
本編のラストは「Octavarium」。自分の中でのDream Theaterへの熱量は比較的波があり、『Train of Thought』が中期のピークのひとつで、その次の『Octavarium』ツアーを観て一度気持ちが落ち着き、マンジーニへの交代劇まで少し距離を置いていた時期もありました。あれからもう20年経っていると思うと時間の経過に少し驚きます。
当時、ルーデスがKurzweil K2500RからKORG OASYSへメイン機材を変更し、「Octavarium」のためにSynthesizers.comのモジュラーシンセをステージに並べていたのを思い出します(実際はほぼOASYSで弾いていた気もします)。今回のソロは現在のマスターキーボードであるKRONOSで演奏。そういえばKRONOSは一度NAUTILUSにフラッグシップの座を譲ったと思っていたら、KRONOS 3として昨年復活していたのですね。最近知りました。
「Octavarium」ですが、やはりこの曲はポートノイのドラムがハマる。そうええばマンジーニ時代にもこの曲や「Stream Of Consciousness」は演奏していない気がします……。静寂からジョン・マイアングのベースラインが牽引するセクション、あの音色とグリーンのMMボンゴを見て、クリス・スクワイアのことをふと思い出しました。
中間部のルーデスのシンセソロはやはりハイライト。個人的に好きなのはこの路線のDream Theaterですし、そう考えると『The Astonishing』の来日ツアーがなかったのは今でも悔やまれます。
アンコールはラブリエが観客にスマホライトを掲げさせての「The Spirit Carries On」、そしてラストはお約束の「Pull Me Under」。この時点で22時少し前。会場の使用制限もあると思われますし、19時スタートで休憩込み3時間弱が日本でのライブの上限なのかもしれません。

それにしても、彼らのようなベテランバンドがこれだけの重厚な内容のライブを連日こなしているという事実は驚くべきこと。進歩の著しいAIが作曲やアレンジまで行ってしまう中、人による身体表現の価値が再評価されている時代だと感じますし、その極地にいるのがこのDream Theaterというバンドだと強く感じた夜でした。
この武道館公演を皮切りに、翌日は六本木・EX THEATER ROPPONGI、その後は愛知、大阪、岡山へと続く今回の日本ツアー。セットリストがどう変化するのか、SNSのレポートを追いながらツアーの成功を願いたいと思います。
Setlist
- Metropolis Pt. 1: The Miracle and the Sleeper
- Act I: Scene Two: I. Overture 1928
- Act I: Scene Two: II. Strange Déjà Vu
- Act I: Scene Three: I. Through My Words
- Act I: Scene Three: II. Fatal Tragedy
- The Mirror
- The Enemy Inside
- Peruvian Skies
- As I Am 〜(intermission 20min.)〜
- In the Arms of Morpheus
- Night Terror
- Midnight Messiah
- Are We Dreaming?
- Bend the Clock
- The Shadow Man Incident
- Octavarium
- encore:Act II: Scene Eight: The Spirit Carries On
- encore:Pull Me Under
早速、今回の日本武道館と翌日行われたEX THEATER ROPPONGI公演のフル動画がYouTubeにアップされていました。これだけ楽しいライブの会場にいながら動画を回しっぱなしというのはなかなか気合が入っていますが、自分の席からは見られなかったステージの演出も見ることができて感謝。2日目は結構セットリストに変更が入っています。このアンコール曲はいいですねえ。
追記:4曲目の「Panic Attack」が終わった後、ラブリエが「短い動画や写真を撮るのは分かるけどさ、一晩中スマホを俺達に向けて動画を撮るのはやめなよ。3Dで俺達を楽しんで」と苦言めいたMC(開始位置リンク)を行っています。そうして撮られたフルセット動画でこのMCを知ることができたのはなんとも皮肉ではりますが、今回改めてラブリエのバンドへの貢献度の深さや愛情を感じたライブだったこともあり、このMCからもそんな彼の真面目な人柄を感じることとなりました。

