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チック・コリアの音楽と思い出

最も敬愛する音楽家の1人でピアニストのチック・コリア氏が亡くなりました。私が生まれる前からマイルスのグループで活躍していた伝説的な音楽家ですが、10代の後半から彼の音楽を聴き続けているので、かれこれ30年近くの付き合いになるでしょうか。

今となっては出会いは思い出せませんが恐らく「スペイン」のカバーかオリジナルのどちらかでその名前を知ったはず。最初に買ったアルバムはチック・コリア・エレクトリック・バンド名義の『Beneath the Mask』。ジャズというよりバリバリのフュージョングループですが、プログレッシブ・ロックや速弾きギターのヘヴィメタルにハマっていた高校生には衝撃的なテクニックで、刺さりまくったのを覚えています。

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デイブ・ウェックルの精密でテクニカルなドラム、当時まだ珍しかった6弦ベースを操るジョン・パティトゥウッチ、メタルのギターヒーローを凌ぐ速弾きギタリストのフランク・ギャンバレ(かつてはフランク・“ガンバレ”と表記されていた)、このバンドでチックに見いだされた(2ndアルバムから参加)エリック・マリエンサル…… 貪るように全てのアルバムを遡って聴きました。

マリエンサル加入前でスコヘン在籍の初期エレバン…… これはこれでめちゃ良い。

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エレクトリックバンドに続いて当然のようにチック最初のエレクトリックジャズグループであり(マイルスバンド以後の)、フュージョンブームの代表であるReturn to Foreverも遡って聴きましたが、アル・ディ・メオラが参加した時代は好きだったものの、やはり自分にとってはチック=エレクトリックバンドの印象が強い。

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FMラジオJ-WAVEの交通情報BGMがチック・コリア作曲で、もろエレクトリックバンドなサウンドだったのが懐かしい。この曲(「TRAFFIC」)は今でも使われているのだろうか?

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エレクトリックバンドを切っ掛けに、同じメンバーのトリオでのアコースティック・バンドからジャズも少しずつ聴くようになり、さらに当時まだ骨董通り沿いにあったブルーノート東京のライブ(WOWOWで放送された)でウェックルに変わって起用されたヴィニー・カリウタの凄さを知ったのもこの頃でした……。

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かつての名作である『The Mad Hatter』に行き着くのもこのヴィニーが叩く「Humpty Dumpty」の原曲を求めてのもの。チックの作品にはファンタジー作品などを下敷きにしたコンセプトアルバムも多く、この辺りもプログレ少年には刺さりやすかったのかも?

始めて生のチック・コリアを見たのは90年代の中頃、毎年多摩センターのパルテノン多摩で開催されていた屋外ジャズイベント。確か最初の2年がチック・コリアが中心になったイベントで(その後、ナイアシンやフォープレイが来た年もあった)、かねてからの夢だったデイヴ・ウェックルやジョン・パティトゥウッチも見られたし(ロイ・ヘインズが来てたときもあったし、順番や組み合わせの記憶はあやふや……)、小曽根真氏と共演したモーツァルトの「2台のピアノのための協奏曲」は今でも強烈な印象が残っています。

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この頃、チックはすでにエレクトリックバンド(2)は終わらせていて、ピアノソロ作の『星影のステラ』が話題になったりもしてましたが、この頃アルバム1枚で終わってしまったChick Corea Quartet(この名義も今となってはチック史に残ってないような……?)の『Time Warp』が大好きでした。パティトゥウッチ、ゲイリー・ノヴァック(エレバン2のドラム)、故ボブ・バーグという強力なメンバー。このカルテットを多摩で見たかった……。

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その後も、2000年代に入ってエレクトリックバンドを再結成させて(数年前の再々結成なども)、私のようなかつて乗り遅れた世代のファンをも大喜びさせてくれたり(その後まさかRTFまで復活させるとは!)、上原ひろみとのピアノデュオ、ジョン・パティトゥウッチ&アントニオ・サンチェスとのトリオ、衝撃的なジョン・マクラフリンとのFive Peace Band…… と常に私の音楽人生に驚きと彩りを与えてくれたのがチック・コリアでした。

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一時期の激太りからの激痩せは病気の影響でなくダイエットだった…… なんてエピソードでファンをハラハラさせてくれたこともありましたが(あのときは多くのファンが覚悟をした)、フェスティバルの大きなステージでも、手が触れ合えるブルーノートのステージでも常に笑顔で、ひょうきんな仕草を見せながらの圧倒的な演奏、どれも素晴らしい思い出として心に残っています。
近作だと(といっても2013年ですか……)若手ミュージシャンたちと結成した新プロジェクトのTHE VIGILが「俺たちの大好きなチック・コリア」全開で、山の行き帰りの車でもよく聴いていましたっけ。来日公演を見逃してしまったのが悔やまれます。

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Return to Forever〜永遠への回帰なんてバンド名は中二心にえらくカッコよく感じたものですが、これで本当に永遠の存在となってしまったチック。その音楽は永遠に生き続け多くのミュージシャンたちによって受け継がれて行くことでしょう。R.I.P. チック・コリア。

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今日はこの10枚を順番に聴いて過ごしています